第128話「見ざる・聞かざる・言わざる」
お昼によく行く大好きなトンカツ屋さんがある。その店のオヤジさんは白衣を着て、メガネをかけ、黙々とトンカツを揚げている。いかにも正統派日本のオヤジといった出で立ちだ。相当通っているが、自分はそのオヤジさんの口から「いらっしゃい」「○枚あがるよ」「ありがとうございました」の3つの言葉しか聞いたことがない。
○○豚をつかっているとか、ミルフィーユ状になっているとか、特筆するところはまったくなく、メニューはロースとヒレ、海老があったかな?飲み物もビールとジュース(バヤリース?)ぐらいしかなかったと記憶している。派手さはないが、とにかくシンプルで美味しい。あ、トンカツだけでなく、「ごはん」「豚汁」「おしんこ」にいたるまで、すべて文句のつけようがない。
通常、トンカツというと、胃の調子が悪いときは避けるのが普通かもしれないが、自分の場合はむしろ調子の悪いときにこのお店にいく。気ぜわしいときでも、なぜかオヤジさんが丁寧に揚げてくれたトンカツだと、ゆっくり食べることができ、素材もいいので逆に胃腸が整うような気がする。
カウンターに座ると親父さんの右側のほうに、「見ざる・聞かざる・言わざる」の木彫りの人形がチョコンと飾ってある。余計なもの(悪事)を見ない、聞かない、言わない」これもまさに自分にとってうってつけのお言葉・・・(笑) オーダーがひと段落すると、オヤジさんがしゃがんで気持ちよさそうにタバコを吸っている。少しオーバーかもしれないが、このお店に来るとすべてが自分の良質なエネルギーになっているような気がする。オヤジさんを見習って、一生懸命シンプルな良い仕事をしたい。
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