第65話「バブルの残り香(前編)」

著者
m.yoshida
2004/03/10
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1991年4月、私が初めて就職したのはD不動産という会社でした。D社は当時、AIDS(一兆円近く借入金があった新興不動産会社4社の頭文字をとったもの)と称され紙上を賑わしていました。正に就職活動真っ最中に※総量規制が発動され、大学在学中、遊びとバイトに明け暮れていた、アホ学生にその意味などわかるはずもなく、勢いにまかせバブルの申し子と言われる会社に何の疑問もなく就職しました。

今年就職活動をしている学生さんから恨まれそうですが、バブル絶頂期の当時は私のような3流大学出のアホでも引く手あまたで、面接に行けば交通費のようなものは出るし、内定者を確保するために、ホテルに缶詰は当たり前、中には海外旅行に連れて行き、拘束する企業さえあったくらいです。

さて、学生気分が全く抜けていない私は、法人向けに不動産を仲介する部署に配属され、週4回の会議と先輩に金魚のふんのようについて回る毎日でした。週4回の会議は基本的に私たち1年坊を除く全営業マンが、仕事の進捗状況、今後の方針について報告し合うという内容でした。

しかし、総量規制の影響で、金融機関が融資できないのに、高騰した不動産を購入できる法人などめったにいるはずもなく、何十億、何百億と言う威勢のいい高額物件の話は飛び交うのですが、今にして思えば、会議はいつも机上の空論だったような気がします。結局私がその部署に在籍していた一年間で成約した案件は2件、手数料にして5000万ぐらいだったと記憶しています。10数人で構成されていたセクションなので、実質の給料分にも満たない額だったのではないでしょうか。

※不動産融資の総量規制

金融機関の不動産業向けの貸し出し(融資)を抑制した大蔵省の行政改革のこと。この規制は平成2年4月から平成3年12月まで実施され、地価抑制に大きな効果をあげたが、同時に急激なバブル崩壊の引き金となった。

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