第66話「バブルの残り香(後編)」
一年後、日本の景気急降下を先取りする感じで、不動産業界、D社の状況は厳しくなり、私を含め同期の何名かは出向に出されることになりました。私は某信託銀行の子会社にいくことになり、そこで一年間お世話になりました。余談ですが、私たちの同期は100名ほどいましたが、翌年は10名ほど、その翌年は採用なしだったと記憶しています。なので私達同期はD社関係の集いでは一生ペーペーです(笑)。
さて、私が配属された支店長は入社早々「D社から君の給料の半分がでてるから、君は一年間で自分の給料分くらい稼げば十分だよ いろいろ勉強すればいいさ」などと非常にOPENな良い方でした。その後、友人の協力もあって、3ヶ月でノルマの手数料を稼ぐことができ、支店長の優しいお言葉を曲解したアホは毎週ジュリアナ(これこそバブルの香ですね!)にも通わせていただき一年間いろいろ勉強させていただきました(笑)。
銀行系の子会社での楽しい一年はあっという間に過ぎ去ってしまいました。D社には戻るつもりでいましたが、私が所属していた法人仲介の部署はなくなっていました。まさに、夢のような竜宮城(出向先?ジュリアナ?)から戻った浦島太郎状態でした。メインバンクから派遣されてきたD社の社長が、私たちを出向に送り出すときの挨拶で「1年間君たちを修行に出す、そしてかならず元に戻す」と言ってたのを信じていた自分が今にして思えばカワイイですね。
その後、私は第15話に出てくる「お師匠様」の会社に就職する訳ですが、振り返ってみると、私にとってこの時期は非常に貴重でした。不動産業界を生き抜くための反面教師のようなもので、景気状況の急激な変化による相場の変動、不動産業者が陥りやすい落とし穴etcなかなか見れない物をリアルにたくさん見せていただきました。バブルの残り香を嗅いだだけで、おいしい(楽な)状況下で仕事をしなかったことは自分にとってとてもラッキーなことだったと思っています。