第91話「弱者保護」
弱者保護・・・聞こえはいいですが、実はどうなんでしょう?日本の法律のいろんな分野に、この考え方が色濃く反映されているような気がします。今回は賃料滞納者のケースについて少し掘り下げてみます。
まず、日本では「自力救済禁止の原則」というのがあるそうです。具体的にいうと、賃料の滞納があったとしても、それを理由に鍵を交換したり、荷物を搬出した場合には住居侵入、窃盗等の刑事責任、不法行為に基づく損害賠償責任等の民事責任を負う可能性があるのです。これは契約書に自力救済を容認する条項があったとしても同様(その部分の契約内容は無効)だということです。
大雑把にいうと流れ的には下記のようになります。
1)賃料の督促
2)賃貸借契約の解除
3)裁判手続き
4)強制執行
これにかかる時間は 約6.5ヶ月
(内訳)
2ヶ月 | 賃料滞納期間 |
+2ヶ月 | 訴訟提起から判決言い渡しまで |
+0.5ヶ月 | 判決言い渡しから強制執行申し立て |
+2ヶ月 | 強制執行申し立てから荷物搬出まで |
これにかかる費用は約 142万 6畳月額8万円のワンルームマンションとする)
52万 | 賃料6.5か月分 |
+30万 | 弁護士、裁判費用 |
+50万 | 強制執行費用(通常の引越し費用の額ではない) |
+10万 | 搬出物件買取&保管費用(賃借人が引き取りにこない場合) |
現在の日本の法律に則って、まっとうに家賃滞納者を立ち退かせるためには、上記のような莫大な時間と費用がかかるのです。私は別に大家の見方をしたいのではありません。ですが、大家は通常、素人ではありませんから、このような法律、手続きがあれば当然そのリスクを回避する行為(敷金、賃料の増加)に及んでくるはずです。そうすると、賃料を滞納する人とは50・50としても、それ以外のまっとう人は迷惑を被ることになるはずです。
立ち退きのケースを例にとりましたが、このようなことは、少しずれるかもしれませんが、殺人を犯した人間に対して(少年犯罪、心神耗弱状態等の場合は特に)も同じような気がします。司法は加害者の立場から考えが発生していて、決して被害者の立場からの発想ではないような気がします。加害者50、被害者50の原則から大きく外れてしまうのは、結果、司法の方たちの嫌う歪んだ社会を作っているのではないかと思います。「弱者の定義付け」、「被害者の立場にも立って判断すること」のご再考を是非お願いしたいものです。